クロマダラソテツシジミは南方系のチョウ(越冬の北限は台湾)ですが、近年、風に乗って日本にも姿を見せるようになりました。
1992年に沖縄で初めて確認されたのち、2007年には九州のほか兵庫県や大阪府、2008年には名古屋でも確認されるようになりました。台湾や東南アジアから風に乗って世代交代を重ねながら北上してきます。しかし「生育気温は15℃以上(卵を含めて)、5℃以下ではサナギも死滅」(NPOおおさか緑と樹木の診断協会)とされ、日本のような温帯域では越冬できません。近年の傾向については、「八重山諸島ではほぼ定着し…スタート地点が近くなり、九州や本州へも飛来しやすくなったと考えられる」との指摘もあります(cf.「植物防疫」第63巻第6号)。このように亜熱帯地方から世代交代を重ねながら北上を続ける昆虫の事例としては、他にウスバキトンボがあります。
* ネットで「クロマダラソテツシジミ」と検索すると、各地の観察記事がたくさん載っています。
なお、クロマダラソテツシジミの食草(幼虫のエサ)はソテツの若葉です。このため、一部でソテツへの食害も見られるようです。
クロマダラソテツシジミに似たチョウに、ヤマトシジミやツバメシジミ、ウラナミシジミがあります。
冒頭の写真は2021年度報告書「いきもの歳時記」のP.20に掲載したものですが、当初私たちはツバメシジミと勘違いしていました。報告書をご覧になった方からご指摘をいただき、クロマダラソテツシジミに訂正させていただきました。
上の写真(クロマダラソテツシジミ)と下の写真(ヤマトシジミ、ツバメシジミ、ウラナミシジミ)を比べてみてください。似てるけど、よく見ると違いますね。
(裏翅の特徴) | ヤマト シジミ | ツバメ シジミ | クロマダラ ソテツシジミ | ウラナミ シジミ |
色 | 灰白色 | 灰白色 | 薄茶色 | 薄茶色 |
尾状突起 | × | ○ | ○ | ○ |
橙色斑紋・黒点 | × | ○ | ○ | ○ |
小黒点 | ○ | ○ | ○ | × |
波状の紋 | × | × | ○ | ○ |
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